腎臓病で起こる様々な症状
腎臓は、血液をろ過し、老廃物や塩分を尿として体外に排出してくれる他、血圧の調整、ホルモンの分泌、骨の形成作用にも関わる重要な臓器です。尿を作るイメージの強い腎臓ですが、それ以外にもさまざまな機能を持ち、身体の健康を維持するための働きを行っています。
それだけに、腎臓に障害が起こると、全身への影響もまた大きなものとなります。さらに、腎臓は一度その機能が失われてしまうと、回復させることが極めて困難な臓器でもあります。
異変を早期に発見し、迅速に治療を行うこと、またそうならないように予防に努めることが重要です。
腎臓の異変は、たんぱく尿や血尿、高血圧、むくみという症状として現れることがあります。
たんぱく尿
腎臓のろ過機能が低下すると、排出される尿にたんぱく質が混じることがあります。たんぱく質が含まれた尿は色が濁り、泡立ちも目立ちますので、普段から注意して見ておくことも重要です。
これってたんぱく尿かな、と思ったときには、腎臓の病気かもしれません。お早目にご相談ください。
なお、高熱時、スポーツの直後などもたんぱく尿が出ることがありますが、一時的なものですので心配する必要はありません。
腎臓病以外のたんぱく尿の原因
腎臓病による腎臓の機能の低下以外のケースでも、たんぱく尿が出ることがあります。
以下に腎臓病以外の主な原因を挙げます。たんぱく尿を指摘されたときや、尿に濁りや泡立ちが目立つときには、当クリニックにご相談ください。
- 膀胱炎
- 疲労
- 体質によるものなど
血尿
腎臓のろ過機能が低下したとき、たんぱく尿と並んでよく見られる症状が「血尿」です。比較的女性に多く見られます。
血尿は、肉眼で分かるほど色が変わっているものから、顕微鏡で見なければ確認できないものまで、幅広く存在します。
血尿があった場合、尿道や膀胱からの出血が原因となっていることもありますが、背中の腰より上の部分に痛みがあるときは、腎臓病を疑う必要があります。
腎臓病以外の血尿の原因
腎臓病による腎臓の機能の低下以外のケースでも、血尿が出ることがあります。
以下に腎臓病以外の主な原因を挙げます。血尿を指摘されたときや、血の混じった尿が出たときには、当クリニックにご相談ください。
- 悪性腫瘍(膀胱がん、腎がん、前立腺がん、尿管がん、腎盂がんなど)
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 性感染症 など
高血圧・むくみ
たんぱく尿や血尿以外の腎臓病の症状としては、高血圧やむくみなどが挙げられます。
腎臓病は、症状の現れにくい病気でもあります。たんぱく尿、血尿、高血圧、むくみを指摘されたときはもちろんですが、症状がない内から、定期的に検査を受け、腎臓病を含めた全身の病気の有無を確認されることが最大の予防になります。
腎機能障害、慢性腎臓病
腎機能障害とは、腎臓に、病気や怪我などで異常が生じ、正常な腎臓の機能が損なわれている状態を指して言います。
慢性腎臓病
慢性腎臓病はその名の通り、慢性の腎臓病すべてを指して言います。慢性腎不全、CKDとも呼ばれます。
潜在的な患者数を含めると、国内だけで1300万人以上の方が慢性腎臓病だと言われています。
慢性腎臓病は、メタボリックシンドロームと深い関係があり、誰でも罹患する可能性がある病気です。腎臓は老廃物のろ過や尿を作る機能以外にも、血圧の調整、ホルモンの分泌、骨の形成を担っているため、慢性腎臓病による腎機能の低下は、全身にさまざまなリスクをもたらします。動脈硬化、糖尿病、高血圧などがその代表です。
慢性腎臓病が進行し、治療効果が得られなくなると、血液透析や腎移植などが必要になります。
症状
慢性腎臓病は、特に初期においては、ほとんど症状がありません。
ある程度まで進行してようやく現れる症状としては、夜間排尿、疲労感、吐き気、痒み、筋肉の引きつり、感覚の鈍化、錯乱、呼吸しづらさ、皮膚の黄色味などが挙げられます。これらの症状が認められる場合には、慢性腎臓病はかなり進行している可能性が高いと言えます。
治療
腎臓の機能を維持するために、主に以下のような治療を行います。
- 血糖値、血圧、コレステロール値、中性脂肪地のコントロールする薬剤を使用します。
- タンパク質、ナトリウム、カリウム、リン、水分の摂取を制限した食事療法を行います。
- 状況に応じて、心不全、貧血に対する薬剤を使用します。
- また、糖尿病や高血圧が認められる場合には、そちらの治療も並行して進めます。
早期発見のために
慢性腎臓病は、初期症状にご自身で気づいて受診や検査に至るケースはほとんどありません。
定期的に、尿や血圧の検査を受けましょう。尿たんぱくが陽性だった方、血清クレアチニン値が高かったという方は、当クリニックにご相談ください。
腎性貧血
腎臓は、実は老廃物のろ過や尿の生成以外にも、さまざまな機能を担っています。
そのうちの1つに、赤血球の産生を促すエリスロポエチンと呼ばれるホルモンの分泌機能があります。
腎臓の機能が低下すると、腎臓が分泌するエリスロポエチンの量が低下し、赤血球が不足することで、貧血が起こります。
こうして起こる貧血が「腎性貧血」です。
症状
腎臓からのエリスロポエチンの分泌量が低下し、赤血球が不足すると、腎性貧血を起こすとともに、動悸、息切れ、めまいなどの症状が現れることがあります。ただし、体調が悪いときに誰でも一度は経験したことのあるような症状ばかりですので、ご自身で「腎性貧血の症状だ」と察知できるケースはほとんどありません。
また、腎性貧血は、心臓にも悪影響を与えます。酸素を運んでくれる赤血球が不足することで、全身が酸素不足に陥ります。この酸素不足をカバーしながら身体を普段通りに動かそうとすることで、常に心臓に負担がかかることになります。
貧血は、決して侮れない症状ですので、気づいたときにはすぐにご相談ください。
治療
腎性貧血の場合、不足しているエリスロポエチンの補うための、造血ホルモン注射によって治療を行います。
また、食事療法や、鉄剤の投与を併用することもあります。